ローマ

2011年10月31日 (月)

『ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)(中)(下)』/塩野七生

塩野七生さんの『ローマ人の物語』第8巻から第10巻を読んだ。この3巻は、「ユリウス・カエサル ルビコン以前」と題され、いよいよ古代ローマ最大の英雄、ユリウス・カエサル(英語読みではジュリアス・シーザー)が登場する。

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塩野さんは、古代ローマ人の中でもユリウス・カエサルという人間にほれ込んでいると公言していて、古代ローマ2000年の歴史を描いた『ローマ人の物語』全43巻のうち、6巻を充ててユリウス・カエサルの生涯を描いている。割合的にも、いかにカエサルのことを詳細に述べているかがわかる。

このうち、この第8巻から第10巻では、ルビコン川を渡るまでのカエサルが描かれる。紀元前100年のカエサルの誕生から、「賽は投げられた」というカエサルの言葉で知られる紀元前49年のルビコン川の渡河までの51年間ということになる。

カエサルという人間の武人、政治家としての能力の高さ、人間的な魅力がふんだんに描ききられている。しかも、その記述は、2000年以上も前の人間のことなのに、まるで塩野さんがその目で見てきたように生き生きと描かれている。

このあたりはまさに塩野さんの『ローマ人の物語』の真骨頂と言えるだろう。

国家への反逆者の汚名を着せられながらも、故国の改革を進めるため自らルビコン川を渡ったカエサル。ルビコン川を渡った後のカエサルが描かれる次巻以降も楽しみだ。

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2011年9月 4日 (日)

『勝者の混迷(上)(下)』/塩野七生著

『勝者の混迷』と題された塩野七生さんの『ローマ人の物語』第6巻、第7巻を読んだ。

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紀元前2世紀半ば、強大国であったカルタゴを滅亡させ、地中海世界の覇者となったローマだったが、その後に続くのは、覇者になったがゆえの混迷の時代だった。

ハンニバル率いるカルタゴを破り、アレクサンダー大王の末裔マケドニアを滅亡させ、今や地中海世界の覇者となったローマの前にはもはや外敵はいない。しかし、そのローマも次第に内から病み始める。300年続いた共和政ローマの自己矛盾やほころびが顕在化し、「内なる敵」が立ちはだかるようになる。

外に敵のいなくなったローマは生き残りをかけて国内改革に迫られる。要は超大国になったがために、生き残っていくためには脱皮が必要となったのだ。

そこに、ハンニバル戦争でのローマ側の英雄スキピオの孫、グラックス兄弟が登場し、国内改革に取組むが、一度できあがった強固なシステムの改革はいつの時代でも困難なものだ。根強い抵抗勢力の前に命を失ってしまう。

それに続く改革も混迷を極めるが、紆余曲折を経て、ローマは何とか脱皮をしていく。

『勝者の混迷』は、地中海世界の覇者となった共和政ローマの混迷の世紀を描いているが、物語の内容が国内改革であり、前巻までで描かれたハンニバル戦争のようにドラマチックでもなく、ハンニバルやスキピオのような英雄も登場してこないし、はっきり言って、読んでいてあまりおもしろくはない。

しかし、大国ゆえの苦悩や混迷、改革の困難さ等々、今日の世界でもそのままあてはまる問題が描かれている点は非常に興味深い。

勝者の混迷がいまだ終わっていない紀元前1世紀のローマ。次巻以降では、ついに古代ローマ史上最大の英雄カエサルが登場することになる。

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2011年8月29日 (月)

『ハンニバル戦記』/塩野七生 著

塩野七生の「ローマ人の物語 3~5」を読んだ。

「ローマ人の物語」の3巻から5巻は『ハンニバル戦記』と題され、ローマの前に立ちはだかる地中海の大国カルタゴの稀代の名将ハンニバルとローマとの戦いを描いている。

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紀元前3世紀後半、新興国家としてようやくイタリア半島を統一した共和制ローマの前に、北アフリカの大国カルタゴが迫ってくる。そして両国は地中海の覇権をかけてついに戦争に突入する。戦争史上に名を残す「ポエニ戦役」だ。

このポエニ戦役では、カルタゴ、ローマそれぞれに偉大な英雄が登場する。カルタゴのハンニバルとローマのスキピオだ。このふたりは、古今東西の名将10人の中にどちらも入ると言われている天才的戦略家だ。

紀元前218年、カルタゴのハンニバルが、象と大軍を率いてスペインからフランスを通り、なんとアルプスを越えてイタリアへ攻め込んだ。アルプスを越えてイタリアに進攻するなんてこと、その当時の誰もが想像さえできなかったことだ。

ハンニバルに攻め込まれ、ローマは建国以来最大の危機に見舞われるが、そんなローマを救うために立ち上がったのが若干24歳のスキピオだ。

こうして、ハンニバルとスキピオという両雄が国家の運命をかけて激突する。歴史上に名を残す「ザマの戦い」だ。

激戦の末、スキピオ率いるローマがハンニバル率いるカルタゴを破り、この一戦でポエニ戦役は雌雄を決した。ポエニ戦役で勝者となったローマは、まさに地中海世界の覇者となり、敗者となったカルタゴは滅亡してしまう。

700年の繁栄を誇った大国カルタゴと新興国ローマの地中海の覇権をかけた攻防、そこに登場したハンニバルとスキピオという稀代の英雄たちの戦い、登る日の勢いのローマとその前に歴史上から姿を消してしまうカルタゴ。

130年間におよぶ壮大な歴史絵巻を塩野七生さんは、いつもながらの見事な筆致で生き生きと描き上げる。特にこの『ハンニバル戦記』では、ハンニバルとスキピオというふたりの英雄に焦点を当て、登るローマと沈むカルタゴを描いているところが印象的だ。

塩野さんの手にかかると、2200年も前のことが、今この目の前で繰り広げられているかのようで、一度読み始めるとおもしろくて止まらなくなった。

5巻を読み終えると、そのまま6巻を読み始めたのだ。

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