クラッシック

2014年1月21日 (火)

クラウディオ・アバド

世界的指揮者クラウディオ・アバドが亡くなった。2000年に胃がんで倒れた後も、手術を経て復活し、最近も若手オーケストラの育成などで活躍していただけに非常に残念だ。享年80歳。ご冥福をお祈りしたい。

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アバドといえば、1990年、20世紀最大の指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが亡くなった後を継いで、世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督に就任し、名実ともに現代最高の指揮者となった。フルトヴェングラー、カラヤンと続いたベルリン・フィルの伝説的常任指揮者を引き継いだアバドはさぞかし重圧だったことだろう。

アバドの演奏は、いかにもイタリア人らしく、歌心にあふれる演奏だった。同じベルリン・フィルの演奏でも、カラヤンの演奏は音をどこまでも完璧に磨き上げた人工的な美しさが特徴だったが、アバドの演奏はどこまでも自然な美しさに満ちていた。

アバドのCDを僕はたくさん持っているが、アバドといって忘れることができないのは、ロンドン交響楽団を指揮したラベルの「ボレロ」の演奏だ。同じテーマが何度も繰り返され、その度にだんだんと楽器の数が増え盛り上がっていき、最後に管弦楽の全奏でクライマックスを迎えるが、アバドの演奏はそこであり得ないハプニングが起こる。

なんと熱狂した楽団員が、最後のクライマックスを演奏しながら、「ウォー」っと歓声を挙げるのだ。オーケストラの演奏で、演奏中に奏者が声を挙げるなんてことはあり得ないことだ。しかし、アバドの熱狂的な演奏ではそれが起こってしまった。

この歓声が自然発生的なものなのか、あるいは作為的なものだったのか。そして、自然発生したものであったとしても、こんなハプニングを録音したものを、録り直しすることなくそのままリリースすることの是非は物議となった。

本当のところはわからないが、僕はこう信じたい。あれはアバドが演奏者に自由に音を楽しむような演奏をさせたところ、音楽が異常に熱気を帯び、演奏者の気持ちが高揚し、思わず発してしまった声だった。そして、あまりにも自然発生した歓声だったので、これはこれでひとつの真実の記録としてリリースしたものだ。そう考えるといかにも指揮者アバドらしい伝説ではないか。(カラヤンでは絶対にあり得ない。)

今もあの「ボレロ」を聞きながらこの文書を書いている。素晴らしい音楽を残してくれたアバドに感謝しながら合掌。

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2013年12月21日 (土)

愛媛大学交響楽団定期演奏会

愛媛大学交響楽団第62回定期演奏会を聴きにいってきました。(12/21(土) 18:30~ 松山市総合コミュニティセンター)

プログラムは、

①ベートーヴェン エグモント序曲 作品84

②シューマン 序曲、スケルツォとフィナーレ 作品52

③ブラームス 交響曲第2番ニ長調 作品73

という内容。指揮は松村秀明さん。

メインプロのブラームスの2番は、僕が愛大響のコンサートに行ったときのアンケートで、演奏してもらいたい曲としてずっとリクエストしてきた曲だったので、すごく楽しみだ。

コミュニティセンターのキャメリアホールはほぼ満席状態。すごい人気だ。

1曲目、ベートーヴェンのエグモント序曲。若々しいパッションにあふれるいい演奏だ。

2曲目のシューマン、陽と陰の対比が美しい演奏だ。

そしてメインプロ、ブラームスの交響曲第2番。

ブラームスの交響曲の中で、松山のような地方都市ではなかなか演奏される機会のない曲で、僕は生演奏で聴くのは今日が初めて。それだけに余計に楽しみだ。愛大響のみなさん、いい機会をありがとう。

で、演奏は、まず第1楽章、第一テーマを奏でる第一バイオリンの美しさは見事だし、第二テーマを奏でるチェロの豊かな響きも素晴らしい。そして、曲全体を通して、第一ホルンの演奏も素晴らしかった。

第一楽章の演奏もとても充実していたが、圧巻はやはり第4楽章。ブラームスが描いた盛大なフィナーレを最後の高みに向かってひた走っていくような演奏だった。そして、コーダの完全燃焼はまさに最高で、一年の締めくくりに聴くにふさわしい感動的な演奏だった。

アンコールは初めて聴く曲で、典雅で盛大なワルツの演奏に心が躍らされた。いったい誰の曲だろうって思っていたら、チャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」からのワルツだった。なかなか渋い選曲だ。

愛大響の演奏会、次回もまた楽しみだ。

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2013年12月 8日 (日)

愛媛交響楽団定期演奏会

大学生の長女とふたりで愛媛交響楽団の定期演奏会を聴きに行ってきました。(18:30~ ・ひめぎんホール メインホール)

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本日のプログラムは

①ワーグナー作曲 歌劇「リエンツィ」序曲

②モーツァルト作曲 ピアノ協奏曲第23番イ長調K488

③チャイコフスキー作曲 交響曲第5番ホ短調

という、冬の定期演奏会にふさわしい豪華ラインナップだ。

指揮は森口真司さん、ピアノ独奏は花岡まり子さん。

まずワーグナーの「リエンツィ」、ワーグナー独特の息の長い旋律を朗々と歌い上げるいい演奏だった。

2曲目は、モーツァルトのピアノ・コンチェルト第23番。ワーグナーの後に演奏されると、モーツァルトの明るく流麗な音楽がより強調される。

第1楽章、モーツァルト自身が作曲したカデンツァのピアノ独奏が素晴らしかった。そして、第3楽章、ピアノとオケが絡まりながら軽やかに駆け抜けていくような演奏も最高に心地良かった。これぞモーツァルトのコンチェルト!

そして本日のメインプロ、チャイコフスキーの交響曲第5番。チャイコフスキーの交響曲の中で、僕がもっとも好きな曲。指揮者の森口真司さんは、ゆっくり目のテンポで、実に堂々と謳い上げた。

フィナーレの燃焼度も素晴らしかったが、愛響の演奏は何といっても第2楽章のカンタービレが最高だった。実に美しく、心を揺さぶられるようなカンタービレ(歌)だった。特に、第2楽章の終わり、音が消え入るように終わる瞬間の美しさといったら!

アンコールは、やはりチャイコフスキーで、バレエ組曲「くるみわり人形」から「行進曲」。明るく軽やかな演奏で、聴き終わって、とても朗らかな気持ちで会場を出ることができた。

我が家の長女はクラシック音楽のコンサートは初めてだったけど、それなりに楽しめたようだ。今日を機会に、クラシック音楽が好きになってくれるといいのだけれど。

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2013年6月15日 (土)

愛媛大学交響楽団定期演奏会

今日は、愛媛大学交響楽団第61回定期演奏会。松山市民会館が工事中のため、場所を松山市総合コミュニティセンターに移してのサマーコンサート。寒風山登山から帰って、聴きに行ってきました。

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今日の演奏会、指揮は松村秀明氏。プログラムは、

①ウェーバー 歌劇「魔弾の射手」序曲

②モーツァルト 交響曲第36番「リンツ」

③ドヴォルジャーク 交響曲第9番「新世界より」

交響曲が2曲並び、サマーコンサートにしてはとても充実した内容だ。

まず、1曲目、ウェーバーの「魔弾の射手」。最初はゆっくりと静かに始まり、最後のクライマックスに向かってどんどん加速していく演奏はなかなか良かった。

2曲目、モーツァルトの「リンツ」。何度も何度も聞き慣れた曲だけど、オケの生演奏で聴くのは初めてだ。それだけに、とても楽しみにしていたのだけど、モーツァルトの交響曲らしく、典雅で流麗、均整のとれた演奏が実に素晴らしかった。とくに、第一ヴァイオリンの音は最高に美しかった。

休憩をはさんで、いよいよ本日のメインプロ。ドボルザーク(と、僕はあえてこう表記したい)の交響曲第9番「新世界より」。僕が中学生のときに初めて買ったクラシックのLPレコードがこの「新世界」(コリン・デイヴィス指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団)だった。

そんな非常に思い出深い曲なので、とてもワクワクしながら楽しみに聴いたのだけど、演奏は最高に素晴らしかった。学生オケらしく、若々しいエネルギーに満ちた、完全燃焼の感動的な演奏だった。

特に、第2楽章、第3楽章の木管楽器、金管楽器のソロパートは、緊張する場面だったと思うけど、非常にきれいな音を奏でていた。また、第2楽章終わりの、ヴァイオリンとチェロのソロの掛け合いは最高に見事だった。そして、第4楽章のコーダ、指揮者のストコフスキーが「血のように赤い夕日が沈む」と評した絶品のコーダは、今日の演奏でもまさに真っ赤な夕日が沈むような演奏だった。

もちろん演奏も素晴らしかったのだけど、プログラムの並びがモーツァルトの次だったので、18世紀にモーツァルトによってウィーン古典派として完成形をみた交響曲が、およそ100年後、新大陸アメリカに渡ったドボルザークによってここまで拡大された交響曲となったことがよくわかって非常におもしろかった。

そして、アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第1番。「新世界より」の完全燃焼の余韻が残る、熱い演奏だった。

愛大響のコンサート、次回もまた楽しみだ♪

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2012年6月16日 (土)

愛大響定期演奏会2012

愛媛大学交響楽団の第59回定期演奏会を聴きにいってきました。

曲目は

①シベリウス 交響詩「フィンランディア」

②ハチャトゥリアン 組曲「仮面舞踏会」

③ベートーヴェン 交響曲第5番ハ単調「運命」

の3曲。サマーコンサートにしては重量級の充実したプログラムだ。指揮者は松村秀明さん。

開場前はあいにくの雨降りだったけれど、松山市民会館大ホールはいっぱいの聴衆。愛大響の人気の高さが伺える。

オープニングの「フィンランディア」。いきなりの燃焼度抜群の演奏だった。うっとうしい梅雨空から始まり、最後は梅雨空を吹き飛ばしてしまうようなスカッとした高揚感が残った。

2曲目の「仮面舞踏会」、圧巻は第2曲夜想曲のヴァイオリン・ソロ。実に落ち着いた美音が印象に残るいい演奏だった。そして、管楽器のソロもとてもうまかった。

そしてメインプロのベートーヴェンの5番。実に堂々とした演奏で、圧倒的な感動に包まれた。

愛大響の弦楽パートのうまさはいつもながらだけど、ヴァイオリンの音の美しさは素晴らしい。そして、第3楽章でのチェロの活躍も素晴らしかった。

しかし、今日の5番の演奏は、オーケストラ全体の燃焼度がすごかった。聴き終わったときに、胸がすくような快演奏だった。

アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第6番。指揮者の松村さんの揺さぶりに、オーケストラ全体が見事に応えたいい演奏だった。

愛大響、いつもいい演奏を聴かせてくれるので、次回、冬の演奏会も楽しみだ。

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2011年10月30日 (日)

パイプオルガン演奏会

聖カタリナ大学・同短期大学部の大学祭の一環で開催された、パイプオルガン演奏会へ行ってきました。(10月30日(日) 15時から)

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パイプオルガンの演奏、CDは何枚か持っているので聴いたことはあるけれど、生演奏は今まで聴いたことがない。今日、生まれて初めてパイプオルガンの生の音色、生の演奏を聴いたのだけど、素晴らしい音楽体験だった。

聖カタリナ大学に、西日本屈指の立派なパイプオルガンがあることは知っていたが、そもそもパイプオルガンの演奏会なんてなかなか開催されることがないし、今まで聴きに行く機会がなかった。

今回は、大学祭でのイベントということで、入場は無料。そして、東日本大震災チャリティコンサートということで、こうして初めてパイプオルガンの演奏を聴く機会に恵まれた。

<↓西日本屈指の立派なパイプオルガン>

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演奏は大阪音楽大学の講師、土橋薫さん。演奏も素晴らしかったが、あまり知られていないパイプオルガンやオルガン曲についてのトークもあり、充実した内容だった。

プログラムは、

①バッハ ピエスドルグ(幻想曲) ト長調 BWV572

②バッハ コラール「われ、汝を呼びまつる」 BWV639

③バッハ カンタータ「主よ、人の望みの喜びよ」

④バッハ G線上のアリア

⑤フランク 英雄的小品

⑥ボヴェ 「赤とんぼ」による瞑想曲

⑦アラン クレマン・ジャヌカンの主題による変奏曲

⑧アラン レタリー(連祷)

そして、アンコールでフォーレのレクイエム。

最初の4曲がバッハで、それ以降はフランスの作曲家の作品だった。土橋薫さんのお話では、聖カタリナ大学のパイプオルガンは、響き的にフランスの音楽が良く合うとのことだ。

で、生まれて初めて聴いたパイプオルガンの生演奏は、素晴らしいのひと言に尽きる。パイプから天に昇り、ホールの天井に反響して再び地上に降り下りてくる重厚で暖かいパイプオルガンの豊かな音色は、まさに神々しい輝きに満ちている。その音色を聴いているだけで心が洗われるような思いがする。パイプオルガンという楽器が教会と結びついているのがよくわかる気がする。

どの曲も素晴らしい演奏だったと思うが、僕は1曲目、バッハの幻想曲が最高に良かったと思う。

松山にこのような立派なパイプオルガンがあるので、演奏会があれば、また聴きに行きたいと思う。

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2011年10月26日 (水)

ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会⑧

イリーナ・メジューエワのベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会の第8回公演を聴きに行ってきました。(19時~ 乗松巌記念館エスパス21)

イリーナ・メジューエワのベートーヴェン、ピアノソナタ全曲演奏会もいよいよ今日がフィナーレ。プログラムは、ツィクルスのフィナーレを飾るにふさわしく、ベートーヴェン最後の3つのソナタ。

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①ピアノソナタ第30番 ホ長調 作品109

②ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110

③ピアノソナタ第32番 ハ短調 作品111

ピアノの新約聖書とも称される32曲のピアノソナタを作曲し、生涯にわたってピアノソナタの可能性を追求してきたベートーヴェンは、晩年に作曲したこの3曲のピアノソナタにおいて、自分自身が確立したとも言えるソナタ形式を、もはや完全に超越してしまう。

ウィーン古典派の到達点と言ってもいいソナタ形式にとらわれることなく、何ものにも縛られず、自分の感性に即して自由自在に飛翔するベートーヴェンの音楽に僕は大きな感動を覚える。

まずは第30番。かなり遅いテンポで、一音一音をいとおしむように紡ぎ出していくイリーナ・メジューエワの演奏は、この上なく深遠で美しく感動に満ちている。白眉は第3楽章、崇高で美しい変奏が続き、最後の弱音が消えていったとき、僕の心はまさに真っ白になり、思わず涙が込み上げてきた。静かな祈りに満ちた深い感動だった。

続いて第31番。ベートーヴェンのピアノソナタの中で僕がもっとも好きな曲だけど、緊張感と安らぎに満ちた素晴らしい演奏だった。第3楽章、「悲しみの歌」が歌い始められる瞬間の静謐な美しさといったら、まさに鳥肌ものだった。

休憩の後、第32番。いよいよ最後のソナタだ。深い精神性と芸術性を感じさせる素晴らしい演奏だった。アリエッタの気品に満ちた演奏は感動的で、最後の1音が響き終わったときには、拍手することが憚れるほど深い感動の中に沈んでいた。

あまりにも深い感動だったので、もうこのまま終わってもいいと個人的には思ったが、続いてアンコールが3曲。ベートーヴェンのバガテルを1曲。そして、2曲目は「Schubert」と紹介されたが、シューベルトの何て曲なのかはわからなかった。3曲目も「Schubert Liszt」と紹介されたので、リスト編曲のシューベルトの曲だと思われるが、曲名はわからなかった。

ベートーヴェンの後に続く作曲家といえばシューベルト。今回のツィクルスで初めてシューベルトの曲が演奏されたが、ベートーヴェンとはまったく異質の甘美なシューベルトの演奏だった。

もちろん今日の演奏そのものも非常に素晴らしく感動的だったが、人類の遺産といっても過言ではないベートーヴェンのピアノソナタ全32曲を、イリーナ・メジューエワという素晴らしいピアニストの演奏で聴ききったこと。そのことはさらに圧倒的な感動だった。2年を要した長い道のりをたどって、ベートーヴェンの32曲のピアノソナタというあまりにも偉大で、あまりにも高い頂にようやくたどり着いた。そんな大きな感動だ。

僕のような地方に住む者にとっては、ベートーヴェンのピアノソナタ・ツィクルスを聞くなんて、おそらく人生で最初で最後のことだろう。まさに人生でたった一度だけの貴重な体験、一生忘れることのできないような感動的な音楽体験だった。

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2011年10月20日 (木)

ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会⑦

イリーナ・メジューエワのベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会を聴きにいってきました。(19:00~ 乗松巌記念館エスパス21)

昨年5月から始まったピアノソナタ全曲演奏会も今日で7回目。前回の演奏会が今年2月だったので、久しぶりの演奏会だった。

本日のプログラムは、

①ピアノソナタ第13番 変ホ長調 作品27-1

②ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-1 「月光」

③ピアノソナタ第18番 変ホ長調 作品31-3

④ピアノソナタ第27番 ホ短調 作品90

の4曲。中期の充実したソナタ群と、後期の始まりを告げる作品だ。中でも、第14番「月光」は、ベートーヴェンのピアノソナタの中でもっとも有名な作品だろう。

まずは第13番。次の第14番とともに、ベートーヴェンはこの2曲に「幻想曲風ソナタ」という副題を添えたが、イリーナ・メジューエワの演奏はまさに幻想曲風の演奏だった。しかし、一転して第3楽章での激しい演奏は圧巻だった。

続いて第14番「月光」が、今日の演奏会のクライマックスだった。誰もが知っているこの超有名作品を、イリーナ・メジューエワは思いっきりルバートを効かせた演奏を行い、僕は大いに驚かされた。第1楽章のテンポは異様なほどに遅く、第2楽章でテンポを上げ、第3楽章でさらにテンポを上げるが、その中でもタメを作ってテンポに揺さぶりをかける演奏は見事だった。

休憩の後、第18番。第14番の劇的な演奏の後、この第18番では実に明るく伸びやかな演奏を聞かせてくれた。こういう演奏もイリーナ・メジューエワの魅力だ。

最後は第27番。ベートーヴェン後期ソナタの始まりを告げるこの作品、今日の演奏は、強奏の激しさと弱奏の美しさの対比が素晴らしい演奏だった。イリーナ・メジューエワのピアニズム全開の演奏だった。

そして、今日のアンコールは3曲。

まずはピアノソナタ第31番の第2楽章。来週の最終回の予告となるものだが、これもテンポを揺さぶり、情感をたっぷりと込めた素晴らしい演奏だった。

2曲目はピアノソナタ第14番の第2楽章。ほんの30分前に聞いたばかりだけど、第31番第2楽章の後に聞くと、また違った印象をもって聞こえる。美しい演奏だった。

3曲目は、第14番の第3楽章。本プログラムのときの演奏ではルバート奏法が印象的だったが、アンコール演奏では、よりオーソドックスな演奏だった。それだけに、イリーナ・メジューエワの確かなテクニックと美しい音が強く印象に残る素晴らしい演奏だった。

そして今日は帰り際、イリーナ・メジューエワさんとお話をすることもでき、大感激の一夜だった。

これでイリーナ・メジューエワのベートーヴェン・ピアノソナタ・ツィクルスも残すところあと1回となった。最終回、第8回の演奏会は来週、10月26日(水)。曲目は、第30番から第32番までの最後の3曲。第31番は僕がベートーヴェンのピアノソナタの中でもっとも好きな作品なので、最後の最後までとても楽しみだ。

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2011年10月15日 (土)

スコラ 音楽の学校

NHKテレビで放映中の「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」を毎回楽しみに見ている。

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坂本龍一さんがゲストとともに音楽の魅力を語り、学生たちに教え、演奏するというスタイルの音楽番組で、昨年放送されたシーズン1に続き、今月からシーズン2が始まった。

僕はシーズン1は見たことなくて、シーズン2から見始めたのだけど、これまでにないスタイルの音楽番組で、すごく刺激的で興味深い番組だ。

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今月のテーマは「古典派」。古典派を概括したうえで、古典派を代表する作曲家、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの音楽に迫っていく。

古典派音楽の歴史的位置付け、その特徴を学び、偉大な3人の音楽家の作品について解説する坂本龍一さんやゲストの話はとてもわかりやすくておもしろい。

また、坂本龍一さんによるベートーヴェンのピアノソナタ演奏は、彼が演奏するクラシック音楽を聞くのは初めてなので、とてもエキサイティングだ。

そして、ワークショップで、高校生たちが坂本龍一さんと対話しながら、ソナタ音楽を作り出していく過程はスリリングでおもしろい。

最近なかなかいいテレビ番組が少ない中、知的好奇心を刺激してくれるとてもおもしろい番組なのだ。

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2011年2月16日 (水)

ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会⑥

第6回となるイリーナ・メジューエワのベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会を聴きにいってきました。(19:00~ 乗松巌記念館エスパス21)。

先日、2月10日の第5回演奏会の余韻もまだ残っている中での今日の演奏会、「ハンマークラヴィーア」の壮絶な演奏に、人生においてそう何度も経験できるものではないくらいの圧倒的な感動に全身が震えた。

本日、第6回演奏会のプログラムは、

①ピアノソナタ第10番 ト長調 作品14-2

②ピアノソナタ第15番 ニ長調 作品28「田園」

③ピアノソナタ第29番 変ロ長調 作品106「ハンマークラヴィーア」

以上の3曲だ。

1曲目の第10番、2曲目の第15番ともに素晴らしい演奏であったが、今日に限っては3曲目の第29番「ハンマークラヴィーア」の演奏があまりにも壮絶であったため、先の2曲の印象が薄れてしまった。

それくらいすごい演奏だったわけだけど、第29番「ハンマークラヴィーア」は4楽章構成の巨大な作品で、スケールの大きさだけでなく、精神的に深い内容、緻密な構成をもち、ベートーヴェンのひとつの頂点を示す傑作であるばかりか、人類史上においても最大のピアノソナタであり、ピアノ音楽における人類最高到達点といっても過言ではないだろう。

そういう作品であるだけに、なかなか生の演奏で聞く機会がなく、今回のツィクルスの中での僕がもっとも楽しみにしていた演奏のひとつでもある。

そして今日の演奏。何度も言うけれど本当に壮絶な演奏だった。イリーナ・メジューエワは女性ピアニストとは思えないような強靭なタッチでこの難曲に挑んでいく。ダイナミックで力強い演奏なのだけど、それが決して機械的にバリバリ演奏するのではなく、血が通い、温もりが感じられる演奏であるところがイリーナ・メジューエワの素晴らしいところだ。

40分を越えるような超大曲の演奏はまさに完全燃焼だった。最後の音が消えていった瞬間、僕は圧倒的な感動に全身が震えた。いや、それは僕だけではないはずだ。なぜなら、演奏後の拍手は今までの演奏会の中でもっとも長くそして熱烈だった。今日のこの「ハンマークラヴィーア」の演奏は、ベートーヴェン・ピアノソナタ・ツィクルスという壮大なプロジェクトの頂点に登りつめたものであるに違いないと僕は思う。

イリーナ・メジューエワのベートーヴェン・ピアノソナタ・ツィクルスも今日の演奏会で全8回のうち6回が終了した。曲目でいえば、全32曲のうち25曲が終了した。残るはあと2回、7曲となった。次回の演奏会は今年の10月。それまでしばらく間が開くことになるが、あと2回の演奏会が非常に楽しみだ。

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