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2010年6月16日 (水)

『葬送 第一部(下)』/平野啓一郎

平野啓一郎の長編小説『葬送 第一部(下)』をようやく読了した。諸般の事情でなかなか読書時間が確保できず、読了までにかなりの期間を要したが、濃密で重々しい作品なので、片手間で読むわけにはいかず、意識を集中して立ち向かわなければ弾き返されてしまうような作品なのだ。

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『葬送』は、19世紀のパリを舞台に、作曲家ショパン、女流作家ジョルジュ・サンド、画家ドラクロワといった歴史的人物を軸に、人間の交流や愛憎を描き上げた歴史小説だ。

第一部上巻では、ジョルジュ・サンドとショパンの愛人関係崩壊の兆しが描かれていたが、この第一部下巻では、ついに9年間に及んだふたりの愛人関係が崩壊の時を迎える。

そこに至るまでのショパンとジョルジュ・サンド、そして、崩壊の直接的引き金となったサンドの娘ソランジュの心理描写はまさに圧巻だ。三人の心が複雑に揺れ動く様、心の襞の奥の奥まで丹念に描かれていて、読みながら圧倒されてしまった。

そして、第一部下巻では、画家ドラクロワの物語が半分以上を占め、ドラクロワによって難解な芸術論が語られ、また、ドラクロワという人間の心理が深く掘り下げられている。第一部下巻の主人公は、ドラクロワと言える。

それにしても、平野啓一郎という作家は本当にすごいと思う。奥深くて重厚な小説世界、硬質で濃密な文体からは、彼の作家としての並々ならぬ才能が感じられる。

これから第二部を読み始めるが、長大な物語がどのように展開していくのか、とても楽しみだ。

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